
出典:公益社団法人 日本技術士会「技術士第一次試験 過去問題」
3次の上三角行列(対角成分が1)の逆行列を求める問題。べき零行列の性質を利用した逆行列の計算、または掃き出し法による逆行列の導出が必要。
対角成分が1の3次上三角行列A=[[1,a,a²],[0,1,a],[0,0,1]]の逆行列を求める問題。
① A×(逆行列)=単位行列。選ぶだけなら、Aの1行目(1, a, a²)と選択肢の各列を掛けて(1, 0, 0)になるものを探す
② ②の各列: 1×1=1、1×(−a)+a×1=0、a×(−a)+a²×1=0
③ (1, 0, 0)になるのは②
AはA=I+Nと表せる(Iは単位行列、Nは対角成分が0の上三角部分[[0,a,a²],[0,0,a],[0,0,0]])。Nはべき零行列でN³=0となるため、A⁻¹=I-N+N²で求まる。N²=[[0,0,a²],[0,0,0],[0,0,0]]なので、I-N+N²=[[1,-a,-a²],[0,1,-a],[0,0,1]]+[[0,0,a²],[0,0,0],[0,0,0]]=[[1,-a,0],[0,1,-a],[0,0,1]]となる。実際にAとこの行列を掛け合わせると単位行列になることが確認でき、これが②と一致する。
■ 単位行列と逆行列
単位行列Iは、対角成分(左上から右下への斜め)が1で、それ以外が0の行列です。どんな行列に掛けても相手を変えません(数の「1」にあたります)。Aの逆行列とは、Aに掛けるとIになる行列のことです。
■ なぜI−N+N²が逆行列になるのか
(I+N)×(I−N+N²)を展開すると、I−N+N²+N−N²+N³=I+N³となります。このNは3回掛けると全ての成分が0になる(N³=0)ので、結果はIです。つまりI−N+N²はA=I+Nの逆行列です。
行列の掛け算は、左の行列の「行」と右の行列の「列」の同じ位置どうしを掛けて足します(3×3行列でも2×2行列と同じ手順です)。
対角成分が1の上三角(または下三角)行列は、単位行列Iとべき零行列Nの和A=I+Nとして表すと、A⁻¹=I-N+N²-N³+…という有限の等比級数的な式で逆行列を求められる(Nのべきがいずれ0になるため)。3次の場合はN³=0となるのでI-N+N²で止まる。
キーワード: 逆行列、上三角行列、べき零行列、線形代数、解析